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「フランク・ブラングィン」展 国立西洋美術館

ブラングィン

国立西洋美術館で開催中の「フランク・ブラングィン」展に行って来ました。
フランク・ブラングィンの略歴・紹介は展覧会公式HPをご参照ください。⇒ こちら。*公式HPは職業診断もあって面白い。

まず、結論。
個人的にはこの展覧会大ヒット。ここ最近の西洋美術系展覧会では一番良かった。
その理由としては、私が本展開催までブラングィンという画家について何一つ名前さえ知らなかったこともあるけれど、決してそれだけではない。

本展では4つの顔を見せるブラングィンを紹介している。
(1)画家としてのブラングィン
(2)壁面装飾家としてのブラングィン
(3)デザイナーとしてのブラングィン
(4)版画家としてのブラングィン

個人的には、画家として、版画家としてのブラングィンに感動した。

圧倒的とも言える油彩で見せる色彩感覚。あの強烈な色彩は今も目に焼き付いて離れない。
明るいオレンジと緑を取り合わせた森の背景に真っ白な白鳥が数羽、身体を休めている作品≪白鳥≫1920-1921年。
コバルトブルーのいかにも地中海?的な海の色と真っ赤な帆は、けばけばしいとまでロンドンのアカデミーで酷評されたが、これまでにない大胆な色使いだっただけであり、単なる毒々しさとは違う≪海賊バカニーア≫1892年。他にも印象に残った作品は多数あるが、後述する。

そうかと思えば、エッチング・リトグラフのモノクロ版画で見せる線描の細かさ、陰影の付け方は、版画界の大御所、かのピラネージ(建造物のエッチングが何点かあり)やレンブラントに匹敵する腕前である。
更には、日本の浮世絵に影響を受けて制作された色刷りの木版画。これがまた良いのだ。モノクロエッチングの緻密さはどこへやら、油彩で培った美しい色彩感覚と簡略化された形態の作品もあれば、清親の光線画を思わせる光と影の風景画、様々な面を見せてくれる。

私は、めったとポストカードの類を購入しないが、今回はモノクロ版画ものを2枚に手を出し、早速飾っている。しかし、やはりポストカードはポストカード。実際の作品とは大きさも異なるが、質感も違っている。

国立西洋美術館所蔵作品の礎を築いた松方幸次郎は、水彩、油彩、版画合わせて、約200点を蒐集していた。蒐集作品の中には他の画家の作品によるものもあったが、これらは1924年に美術品などの贅沢品の輸入に100%の課税がかけられることがきっかけで、日本への輸入が困難となった。そこで、ロンドンの倉庫とパリのロダン美術館に保管されたが、ロンドンの倉庫が火災に遭い、作品は全焼する!
この200点の作品が残っていたら、ブラングィンの画家としての知名度はもっと上がっていたというが、展示作品を観ればなるほどと頷けるものがある。
更にこの2人は、火災以前に松方のコレクションを元に「共楽美術館」の建設を夢見ていた。ブラングィンは美術館の建築デザインを依頼されていた。ところが、1923年の金融危機、続く1927年の関東大震災をきっかけにコレクションは散逸し、夢の美術館として終わる。


展覧会の構成と概略は次の通り。
?.松方と出会うまでのフランク・ブラングィン
・アーツ&クラフツ運動とアール・ヌーヴォー(作品番号1~19)
・大画面の絵画(作品番号19~29)

?.フランク・ブラングィンと松方幸次郎
・第一次大戦期のブラングィンと松方(作品番号30~39)
・共楽美術館建設に向かって(作品番号40~56)
・松方が蒐集したブラングィンの作品(作品番号57~80)

?.壁面装飾、版画、その多様な展開
・エッチングとリトグラフ(作品番号81~96)
・木版画と日本(作品番号97~107)

次に冒頭に挙げた以外の印象に残った作品について。
まずは、油彩。
・≪海の葬送≫1890年
ブラングィンの作品モチーフには船を扱った作品が多い。ウィリアム・モリスの工房で装飾芸術を手がけていたが、工房を離れてパリに移り、船員として働きながら作画活動を行っていた経験から生まれたもの。それゆえに、他の作品群と違って、海や船を扱った、例えば≪しけの日≫1889年などは、抑制した色彩で同一作家の作品ではないようにも思える。本作は、船で死亡した船員を海に流す場面を沈鬱に描く。空も甲板も曇っていて、悲しみがこちらにも伝わって来る。

船をテーマにした作品が多かったことも、造船業を営んでいた松方の好みと一致し、コレクションのきっかけとなった。

・≪慈愛≫1900年
≪海の葬送≫とは対照的。油彩であるが、どこかパステル画のような筆使い。これもブラングィン作品の特徴のひとつ。どこか、タペストリー的で、実際、タペストリーにしたら、さぞかしと思わせる。左よりの青いドレスの女性が聖母マリアと見立てた寓意画。

・≪りんご搾り≫1902年
これも凄かった。リンゴがキャンバスからこちらまで飛び出してくるのではないかと思わせる。おびただしい数のリンゴの色は全て微妙に異なり、、中央の女性の上着は≪海賊バガーニア≫で見せた程の強さはないが赤色で、作品のアクセントになっている。濃密な画面構成。同じく濃密過ぎるほど濃密な画面構成な作品≪ラージャの誕生日の祝祭≫1905~1908年も挙げておく。

次に版画作品。

・≪若者の功名心≫1917年 リトグラフ
雨が降りしきる中、青年と少年のちょうど境目頃に見える若者の左斜め後方からの姿を描いた作品。一瞬、ノーマン・ロックウェルの絵かと思った。少ない線なのだが、若者の功名心よりもどこか孤独で寂しげではかない。遠くに見えるのは軍艦。本作品は「船乗りを養成する」という連作の中の1枚。

・≪アルビの古い橋≫1916年 エッチング
リトグラフよりエッチングに優れた作品が多かったように思うが、中でもこの作品にはとても惹かれた。
まず、構図。大きなアーチ型の橋脚とそこを抜ける小船。川面は静かにないでいて、櫓を漕ぐ波紋までしっかりと線描されている。
モノクロなので、色は分からないが恐らく夕景の一場面。
本作品を含むエッチング作品の所蔵先は全て東京国立博物館なのはなぜなのだろう?東博とブラングィンとの関連が分からない。

・≪雪のついた木≫1920年頃
昨年の江戸東京博物館の「よみがえる浮世絵」展に出展されていそうな作品。いやもしかしたら、出展されていた?(後で図録確認しよう。)簡略化された雪のついた枝黒く強い線でうねっている。背景にはぼんやりとした樹木と煙突付の住宅がある。

デザイナー、壁面装飾家としてのブラングィンの良さは、あまりにも画家、版画家としてのインパクトが強く薄れた。同様に、夢の美術館で終わった「共楽美術館」関係の展示はやや物足りない気がした。ブラングィン作品に惹かれるあまり、そちらに集中してしまった結果かもしれない。
壁面装飾の方は、イギリス・リーズの≪セント・エイダンズ教会のモザイク≫など素晴らしい作品を残しているが、残念ながら展示作品だけでは、その凄さを頭では理解できるが、感じ取るのは難しかった。

絵画・版画作品だけでも十二分に素晴らしく満足できる。

気になる講演会も開催される予定なので、再度足を運びたい。
講演会詳細はこちら
スライドトークはこちら

*5月30日まで開催中。

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一村雨さま

こんばんは。
ブラングィンの絵も版画もとても気に入りました。
共楽美術館構想はかないませんでしたが、だから今の暮らしが
あるのだろうし、これで良かったのだろうと思います。

No title

やはり、白鳥と海賊の絵にはガツンとやられますよね。
この画家と松方の関係があって、今の西美があるのだと
はじめて知りました。

キリル様

多くの方に観ていただきたい!
⇒ 仰る通りですね。
  壁画が持ってこれないのは何とも残念。もっと観たいブラングィン!
  こういう時、屏風って便利だなと思います。

No title

こんばんは。
楽しみにしていた展覧会でしたが、その期待以上の内容に大満足でした。人出は少ないですが、そういえば以前に西美の展示室で開かれた版画展のときも、素通りする人が多くてがっかりしました。多くの人に見てほしいです。

あおひー様

こんばんは。
ムンクですか。う~ん。
版画作品は別として、油彩は
これまで見たことにない鮮烈な印象が残りました。

No title

こんばんは。
自分のブログには書き忘れてしまったのですが、不r-図といいちょっと暗いトーンのあるところがどことなくムンクちっくだったなあと。

両者の作品を並べて鑑賞してみたい衝動に駆られました。

21世紀のxxx者さま

こんばんは。
本当にあの版画にはびっくりしましたね。
油彩でかなり満足したのに、もうお腹いっぱいになりました。

No title

私もこの展示を観てきたのですが、つくづく火災は悔やまれますね。
油彩の色彩も見事でしたが、予想以上に版画が楽しめました^^

すぴか様

東博の件、ご教示ありがとうございます!
なるほど~そんな経緯があったのですね。
しかし、今東博にある意味って歴史的には理解できますが
あそこの常設で展示される機会などあるのでしょうか?
だったら、いっそ西洋美術館に所蔵先を変更して、鑑賞機会を
増やして欲しいと思いました。

No title

こんにちは。
フランク・ブラングィンて、松方コレクションのことで、名前ぐらい聞いてたはずなのに、今回これを見るまではこんなにもいろんなこと出来た人なんて全然知りませんでした。
ほんとによかったです!版画は特に。

大正時代にブラングィンの版画が三越で展覧され、ブラングィンが展覧会後に東京帝室博物館〈現東博)に寄贈されたとか、図録の129頁にありました。
わたしも不思議に思っていました。ここを読むと素晴らしい人なんだなあと、さらに思いました。
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